障害者の歯科保健医療と生活支援

九州歯科大学 副学長、附属病院長老年障害者歯科学分野教授 大会長 柿木 保明

 この度、2017年10月28日、29日の両日、一般社団法人日本障害者歯科学会第34回総会および学術大会をアジアの玄関口である福岡市の福岡国際会議場で開催いたします。福岡市での開催は、第12回(1995年、大会長:塚本末廣先生)、第28回(2011年、大会長:緒方克也先生)に次いで3回目となります。

 第34回学術大会は学会誕生から約3分の1世紀を経た大会で、この間に、わが国は高齢化社会から超高齢社会へと変貌を遂げ、高齢の障害者数も増加してきました。

 私自身も、大会長が決定した後に約半年間の入院生活を送ることになり、寝たきりによる運動機能障害、気管切開及び経管栄養による摂食嚥下障害を経験いたしました。その間に、看護や介護の問題、入院生活を終えた後の生活のことや、本来、持ち合わせている機能を奪う医療の実態にも触れました。そこで、この経験から今回の学術大会のテーマは「障害者の歯科保健医療と生活支援」としました。わが国の障害者に対する歯科医療は、これまでのう蝕と歯周疾患に対する治療に加えて、口腔のケアをはじめとして、摂食機能療法などのリハビリテーション、歯科訪問診療など、生活を支援する医療として広がりをみせています。その一方で、歯科医療の提供に終始して、生活支援を考慮していない現実もみられます。今後は、障害者の生活を支援できるような歯科医療と歯科保健の提供に取り組む必要があると考えます。

 すべての障害者に対して質の高い歯科医療とケア・リハビリテーションを提供できる体制を作るために、本大会では、歯科医師をはじめとした高齢者医療に携わる専門職が、それぞれ何ができるか、を考えるための機会を提供したいと考えています。そこで、特別講演は、國學院大學教授の佐藤彰一先生に「障害者の権利擁護と医療」と題して、教育講演は、本学会副理事長の緒方克也先生に「障害者の歯科口腔疾患に対する予防と診療」と題して行っていただきます。会長講演として、自分の発病・入院体験をもとに「闘病経験からみたケア、リハビリテーション」を予定しています。シンポジウムは「摂食嚥下障害とQOL」、「障害者歯科における歯科衛生士の役割」などを予定しています。市民公開講座は、福岡県歯科医師会の協力の下「障害者の地域連携医療」を予定しています。

 また、これまで国際セッションあるいは国際シンポジウムとして行ってきた部門を、アジア国際障害者歯科学会キックオフ大会として、弘中祥司iADH理事長を大会長に共催することになりました。キックオフ大会は、できるだけ同時通訳にて開催される方向で準備しています。

 皆様のご支援をもとに、有意義な第34回学術大会になることを願っております。アジア障害者歯科学会のキックオフ大会への参加もあわせて、多数の方のご参加を心よりお待ちしております。

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Copyright © The 34th Annual Meeting of the Japanese Society for Disability and Oral Health.